上野龍 写真展 「布を置く」に行ってきた。

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「布置」って何だろう?

4/14(土)小伝馬町。
林朋彦写真展「トコヤ・ロード」で、
林朋彦さんや赤城耕一さんの写真家のお二人に言われた。

「ルーニィでやってる写真展はいいよ。見に行ったほうがいい。プリントがきれいなんだから…」

林さんの写真展のあと、近くにあるルーニィというギャラリーに行ってみた。


ビルをエレベーターで上がった。
ギャラリーに入るとすぐ目に入った。

上野 龍 写真展
布を置く

(布を置く?なんのことだろう?)

モニクロの写真。
セクシーな女性の脚。
心象風景のような木の影。
スナップ写真に見えるけど、どうもちがう静物。
無機質なモノ。

(これってひとりの写真家の作品なの?)
どうもひとりの写真家には見えない。
テーマがバラバラ。
不思議だ。

作品を見て廻る。
たしかにモノクロのプリントが美しい。

写真家 上野 龍さんに聞いてみた

私は上野さんに聞いてみたかった。
「どんなことを感じて思って写真を撮っているのか?」

上野 龍さん
「カメラをただ世界を写す道具として使っていない。
モノクロのフィルムで撮ると、
自分が見たものと違って、現れると思った。
それが面白かった」

ガッティ
「なんだか写真展に来た気分とちがうんです。
カメラを使って写真を撮影したものとちがうような…。
まるで絵を描いているみたいな…」

上野さん
「そう、銀を使って絵を描いているみたい…」

上野さんの写真の世界観を聞く。

私はカメラを使って、世界を写し取るものが写真だと思っていた。
でも上野さんが語るのはそれとまったく違った。

見ているものと異なるものが、モノクロ写真にすると現れる、と。
それがオモシロイのだ。

ユング心理学の「布置(ふち)」という言葉。
上野さんは自分がやっていることを説明するのに苦労していた。
そんなとき、「布置」というピッタリなことばを見つけたのだ。


上野さん
「何が写っているかという情報そのものの写真ではなくて。
存在としての写真そのものに興味がある。

例えば。
夜空に広がる星空を見上げてみる。
無数の星に、星座という意味をもたせる人。
そこに何も意味をもたせない人。
見る人によって違う。

(私の作品に)面白味を見つけた人には楽しめるし。
そうでない人には何も意味をもたない。
何もわからない人にはそれをそのまま持ちかえってもらいたい。
分かろうとしなくてもかまわない」

女の人、花、煙突が写っている写真。
それは見れば分かる。
写っているものに意味はない。

写真そのものの存在について興味がある。
そのつながりみたいなものを認識できると楽しめる。
存在としての写真に興味がある…」

ガッティ
「もともと、何かテーマを持って、写真を撮っていたのですか?」

上野さん
「写真を始めたのは26歳の時。
モノクロのフィルムの撮影、現像を教えてもらった。

カメラを初めて持ったとき、実際に眼で見たものと、
写真であがってくるものがあまりに違うのが凄く面白くて。

そこら中のものを写すのがものすごく面白かった。
それが今でも続いているようなところがある。

モノクロ写真で撮った時点で、
現実のものとは形自体は眼で見ていたものとはよく似ているんだけど、
写真になると違うものに変わってしまうことが凄く面白くて。
それを写真を始めた時からひたすらやっている」

「その写真のかたまりを見ているときに、
これは他人にはどう見えているんだろうとか、
そこに凄く興味がある」

「今まで、自分がやっていることを説明することに苦労していた。
やっていることを説明するために「布置」という言葉に出会った。

「布置」という言葉から、
写真をセレクトしたり、編集したりしているわけではない。

自分がしていることを説明できる言葉をずっと探していた…」

写真のなかには、意図的に黒い部分が帯のように写っているものも。
これは、写っていないコマを撮影のときにわざと用意しておくそうだ。

絵を描くように、キャンバスに色を塗るように、写真をつくる。
「撮る」より、「つくる」というニュアンスに近いように思う。


写真の楽しさをおしえてもらえた

ユングの布置。
星座の話し。

特にモノを撮影している写真は、
一見、意味をなさないように見える。
どういう意図があるんだろうと、
じっと見てしまう。

その謎も、上野さんの話しを聞いたら、わかった気がした。
そもそも見てわかるようなものを撮ろうとしていない。

自分の眼で見たものと、カメラで撮影した写真は異なるもの。

上野さんにとって、それがたまらなく面白いのだ。
研ぎ澄まされた感覚から生み出された写真なのだ。

カメラはただ、見えている世界の情報を捉える道具ではない。
自分の外に広がる世界を、
様々な角度から見ようとする冒険へのガイド役かもしれない。

上野さんから話しを聞いて、自分が面白かったこと。
カメラを使って写真を撮ることを、
こんな見方で感じている人がいるのかと。
それに驚いた。
カメラで写真を撮影することの、新たな楽しさをおしえてもらった気がした。