気になることをいろいろ聞いてみた
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目次:
1.ニューアルバム、コンサートについて
2.演奏中の動きに惹きつけられる
3.堀越さん、質問です!動きを意識していますか?
4.世界にふたつとないもの
5.向かっている先が同じ
6.クラシックの魅力にとり憑かれた
7.お客様の反応は毎回ちがう
8.今の時代になにをするか?
9.CDがクラシック情報誌に紹介されました!
10.コンサートではいろいろ起きているんです
11.百倍練習しないと追いつかない!
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6/22(木)、関西・名古屋ツアー直前リハーサル中のおふたりにインタビュー出来た。
5/24発売されたニューアルバム『OBSESSION』や 7/8銀座ヤマハホールのコンサート、
今注目のOBSESSIONというユニットの気になる色々なことについて聞いてみた。
さぁ、みなさんもいっしょに、この楽しいおしゃべりを楽しんでくださいね。
1.ニューアルバム、コンサートについて
ニューアルバム『OBSESSION』OVCT-00132 定価3,000円(税別)
ガッティ
「CD収録曲はどうやって決めましたか?」
堀越さん
「すでにアルバム3枚分くらいのレパートリーはあるんですが、今回アルバムに選んだ曲は7曲。ラフマニノフは出会って初めて音を出しをした曲、ユニットを組むきっかけになった曲ということです。アルゼンチン舞曲集は最初にアレンジした曲。また最初のアレンジから1年くらい時間を経てリアレンジしたアストゥリアスなども入れました。」
三舩さん
「1曲目のシチェドリンはもともとピアノ曲ですけど、今ではデュオの曲のように感じています。」
堀越さん
「どの曲もどんなディスカッションをして出来たか思い出せる、いわば1枚目のアルバムにふさわしい選曲です。」
三舩さん
「厳選!(笑) OBSESSIONの世界を一番表現している曲を集められたと思っています。」
堀越さん
「その中で一番最後にアルバムに入れようと決めた曲がサティのジムノペディ第1番。」
三舩さん
「すべりこみで、レコーディングの2日前に入れようと決めたんです。」
堀越さん
「でもこれが入ったことでアルバム全体が非常に落ち着いたものになりました。」
三舩さん
「すごく評判がいいんですよ。(笑)」
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【三舩優子piano ☓ drums堀越 彰 OBSESSION】
CD発売記念コンサート
開催日:2017年07月08日(土)
開場13:30 / 開演14:00
場所:ヤマハホール(銀座ヤマハ7~9F)
三舩優子×堀越彰OBSESSION7/8(土)銀座ヤマハホール詳細ページ
チケットは発売中です。
売り切れる前にお早めに。
ジャパン・アーツぴあ、チケットぴあ、ローソンチケット、イープラスでお買い求めいただけます。
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2.演奏中の動きに惹きつけられる
最初にOBSESSIONを見たのは昨年春、丸の内で行われたラ・フォル・ジュルネだった。
ステージ上のピアノとドラムセット、これから対決が始まるという空気が流れてた。
そして演奏が始まると、どうもふたりの動作を目で追ってしまう。
三舩さんが身体を大きく揺らし曲の流れに応じて動いている。
ピアノ全体を鳴らして会場全体に響かせている。
堀越さんの演奏を観るのは初めて。
ダイナミックなドラミング、魅せる演奏スタイル、動きがキレイだ!
両手を大きく拡げ、ときには立ち上がりそうな勢いで叩く。
歌舞伎の見栄を思わせるポーズ、こんなドラムの演奏は見たことなかった。
ご本人に機会があったら聞いてみたかった。
3.堀越さん、質問です!動きを意識していますか?
堀越さん
「演奏中の動きはドラムを叩くための必然の動きです。ひとつの動きがそれだけで終わらず、次の動きにつながるんです。1打1打では終わらない、回転の動きなんです。」
ガッティ
「そういうことを意識されているのですね。」
堀越さん
「僕がプロになったきっかけを作ってくれたのはジャズピアニストの山下洋輔さんです。山下洋輔さんの演奏は即興ですから、準備が出来ない。演奏をしながら聴こえてくるものに反応していく、スピーディなやりとりの連続なんです。ドラムセットは大きいので移動も大きくなるんですが、身体の使い方や腕の使い方をスムーズにすると、自分が感じたことがリアルタイムに反応出来るんです。脱力がポイント。さらに関節を中心にした円運動や日常生活ではあまり使わない胴体の使い方など、動きに関してはとても興味があって、随分いろいろ研究しました。子供の頃に憧れたブルース・リーや、古武術、スポーツ医学の本を読んだりして試行錯誤しました。ドラムに置き換えてみたりしてね。」
ガッティ
「日舞に似ているって、言われたことってありますか?」
堀越さん
「ありますね。父が日舞家だと言うとみなさん腑に落ちるようで・・・、でも父から影響を受けているわけではないんですよ。まったく受けていないとも言えないですけど。父は茶道なども好きでその所作を見て育ちましたし、日本の古典音楽が日常的に流れていたのは確かですね。兄貴がロックギターをかき鳴らし、親父が長唄で踊っている、そんな家庭で育ちました。今、僕は日本の古典音楽をモチーフにするユニットを持っていますがとても自然にやれています。」
ガッティ
「尺八奏者と組んでいるLOTUS POSITION ですね。」
4.世界にふたつとないもの
今回、私が聞きたかったことをぶつけてみた。
ガッティ
「おふたりはOBSESSIONでどんな音楽をしたいのですか?」
堀越さん
「世界にふたつとないものがやりたい、これは僕がいつも思うことです。カッコイイから真似しようなんてことは絶対なくて、ふたつとないもの、だれも観たことも聴いたこともない世界を創りたいんです。僕がクラシックを聴くようになったのは遅いんです。『SOLO-ist』と名付けた公演を始めるすこし前だから2000年頃かな。ドラムの表現の可能性を拡げたいと思って始めたパフォーマンスで、本来のリズムセクションの役割とは別に、表現のドラムにトライしたかった。フラメンコ・ダンサーとのバトルがあったり、弦楽カルテットとのコラボがあったり、もちろんドラムソロもあるんですが、音楽だけではなく、ビジュアルという切り口、アートっていう切り口でもドラムは生きるんだという気持ちだったんです。ドラムセットの周りを動くオブジェで囲み、そのオブジェの動きと同化したように叩く、動きをテーマにしたシーンもあったり。ストラヴィンスキーの『春の祭典』やバルトークの弦楽カルテット曲、そしてラフマニノフの『パガニーニの主題による狂詩曲』が含まれてた。それらの曲を自分のレパートリーとして頻繁に演奏するようになった。それがクラシックとの出会いなんです。」
クラシックの魅力にとり憑かれていた堀越さん。
「そんなときに三舩さんと出会ったんです。三舩さんのピアノを聴いて素晴らしいと思った。でも最初はユニットを組むという発想はなかったんです。三舩さんが組むとは思えなかったですしね。僕がリクエストして三舩さんが弾いてくれて、これ一緒にできるかもっていう曲が1曲見つかった。それが『ラフマニノフのパガニーニの主題による狂詩曲』なんです。」
ガッティ
「パガニーニの狂詩曲は毎回演奏されていますよね。」
堀越さん
「そうですね、あの曲がドラムという楽器の特性から最も遠いアプローチかもしれないですね。」
三舩さん
「本来、オーケストラではピアノのソロと弦の曲ですからね。」
堀越さん
「僕は弦のアンサンブルを担当しているイメージです。OBSESSIONの特徴がよく出ている曲だと思います。」
ガッティ
「最初から緊張感が張り詰めて、グレートーンの色あい、風がふいて嵐になって・・・。そしてラスト3分、あのメロディが始まる。」
三舩さん
「ひとつの物語ですよね。」
堀越さん
「ストーリーですね。美しい景色をただ見せるのではなく、風が吹いて雨が降って、厚い霧に覆われている景色があるとします。そこに感じるのは寂しさや不安かもしれない。やがて雨が止んで霧が晴れ、雲の隙間からひと筋の光がさし景色が少しずつ見えてくる。どのように感じるかは人それぞれですが、お客様には曲を音楽としてだけではなく、物語として受け取ってもらえたら嬉しいですね。ドラムはメロディがなく抽象的な楽器ですから、逆にいろいろな表現が可能だと思っています。」
プロは楽器を正確に譜面とおり的確に弾く、
その技術がすごいんだと思っていた。
でもそれだけじゃなかった。
技術を越えた向こうに表現があった。
5.向かっている先が同じ
ガッティ
「パガニーニの主題による狂詩曲は、ピアノ版、ピアノとオーケストラ版と何種類か譜面がありますがピアノとドラムの譜面はないですよね。」
三舩さん
「クラシックは楽譜ありき、楽譜のまま進んでいます。確かに楽譜通り弾いていますが、ひとりで弾くときとOBSESSION では弾き方を変えています。大変なのは堀越さん。譜面がないのでいろいろ考えなきゃいけないんです。技巧的なことはお互いに違う楽器なのでわかりませんが、OBSESSION をやっていて一番感じることは曲の捉え方が似ているなぁと思います。何を感じてどうしたいかが似ている。いつも同じような風景を見たり、同じような感情を持っている。そのイメージの一致が音楽を作り上げているのかなぁと思います。」
ガッティ
「だから一緒に音楽をやろうと思ったんですよね。」
三舩さん
「イメージって、いちばん大事なんです。」
堀越さん
「タイミングが合ってますね、ってよく言われますが、あっているのはイメージで、全体の流れをどこにどうやって持って行きたいかが一致しているんだと思います。でも自然に合っているわけではなくて、新しい曲に取り組むときは合わせるための作業はたくさんします。」
三舩さん
「そこは大事にしています。」
堀越さん
「それともう一つ、OBSESSIONで大切なことは空間です。それがこのCDにはよく表現されていて嬉しいです。オクタヴィア・レコードの素晴らしいエンジニアの感性がそこをキャッチしてくれたと思っています。これが公演となるといろいろな場所で演奏しますから大変。よく響く場所、あまり響かない場所。」
ガッティ
「場所によって演奏のしかたは変わるのですか?」
三舩さん
「毎回変えますね、タイミングも。」
ガッティ
「えっ~~~」
三舩さん
「ペダルの使い方も、うたいかたも、全部ちがいます。」
ガッティ
「へぇ~~~。そういうもんなんですか?」
三舩さん
「そういうものです(笑)、まずパンと叩いたときの残響がちがう。理想的なバランスと音色と残響、それはなかなか難しいです。ピアノは毎回、楽器がちがいますしね。ここにあるのはフルコンサートグランドで一番大きいピアノですが、小さいピアノで弾くときもあります。」
ガッティ
「ひとによってはPA(音響)を使うひともいるんですか?」
三舩さん
「クラシックは基本、生音、PAは使わないですね。OBSESSION を始めた頃は、PAを入れたこともあるんですが、ピアノの音がまったく変わってしまう。なんとなく気持ちが悪いんです。日頃、耳なれている音と自分の音が違うので。PAを使わずに調節している堀越さんは本当に凄いな、と思っています。」
6.クラシックの魅力にとり憑かれた
ガッティ
「OBSESSIONはやっぱりクラシックって言ったほうがいいんですよね。」
三舩さん、堀越さん
「クラシックです!」
ガッティ
「よかった。怒られなかった(笑)」
堀越さん
「OBSESSION はクラシックのユニットです。今回、いろんな雑誌にCD評を書いていただいていますが、クラシックとして受けいれてもらっていることに喜びを感じています。僕はドラマーですので、三舩さんと出会わなかったらクラシックの世界に来ることはなかったかもしれない。クラシックの評論家のかたに “ 堀越 彰のドラムは・・・ “ と言っていただくのは、本当に嬉しく光栄なことです。最初にふたりで決めたことは、クラシック
のその楽曲が本来持っている良さや魅力を、やりやすいように変えるのではなく、なるべく忠実に、あるいはより魅力的になるようにアレンジすることなんです。リズムはよりリズミックに、そこから解き放たれて美しく流れるメロディはより美しく。クラシックの最もクラシックらしい、その曲の持っている一番の魅力を表現したいという気持ちでやっています。OBSESSIONという名前をつけたのも、僕達がクラシックの魅力にとり憑かれた
っていう意味なんです。」
三舩さん
「私達の音楽にとり憑かれて・・・ではなくて(笑)、クラシックの魅力に目が離せないというニュアンスです。」
堀越さん
「僕達こそがクラシックのあらゆる要素にとり憑かれている。何百年もかけて残ってきた、偉大なる作曲家の名曲。それと対峙し、僕の場合は今の時代にドラムで表現しCDになっている。この一連の活動は僕がその魅力にとり憑かれたからこそ、まさにOBSESSIONなんです。」
7.お客様の反応は毎回ちがう
三舩さん
「子供の頃から私もロックやジャズを聴いて育ちました。今でも日常に流れているのはクラシックではないですね。でも一度クラシックを演奏しようとすると、やればやるほど難しいし、奥が深く行き着くところがない。OBSESSIONで、同じ曲を何度も何度も演奏しますが、毎回新鮮な気持ちでその楽曲の奥深さに気付きます。また会場やお客様が違うと曲の印象も変わりますね。」
ガッティ
「お客様の反応もちがうものですか?反応に影響されますか?」
三舩さん、堀越さんが一緒にうなずく。
「すごく影響されます」
三舩さん
「私はOBSESSION以外のユニットを組んだことはないんです。室内楽をやっても一回きりのコンサートがほとんどです。OBSESSIONは今だからこそ出来るんだと思います。若い頃だったら絶対無理、迷いがあったでしょうし。今、ある程度キャリアを積み重ねてきて、やっぱりクラシックだっていう思いが自分のなかであるんです。でも新しいことを常にやりたい、刺激を求め続けてゆきたい。そんなタイミングでOBSESSION に出会えたなって思っているんです。」
堀越さん
「三舩さんは僕が何をやってもクラシックからブレずにいてくれる。クラシックの王道があるんです。だから逆に僕が自由にトライ出来るんです。」
8.今の時代になにをするか?
堀越さん
「僕は時代と向き合うことがとてもとても大事だと思っています。今の時代に僕たちが何をするのか、どんな音を残すのか。全てはカテゴリーで分かれていますからある人によってはジャンルは何なのか?とか考えるかたもいらっしゃいますが、誰もやっていないこと、今やるべき価値のあるものをやりたい、と思った時にジャンルが邪魔になることがあるんです。」
ガッティ
「ボーダーレスなひとなんですね。」(3人で大笑い)
三舩さん
「いいものはいいっていうことですね。」
堀越さん
「でもOBSESSION のCDはクラシック売り場に置かれてますので、お求めはそちらに。」
ガッティ
「ちゃんとインタビューの締めの言葉をいただけました(笑)。」
堀越さん
「ご自分の感性でcatchしていただきたい。うん、こっちのほうがいいかも。キャッチしていただきたい! 」
三舩さん
「Catch me if you can !」
ガッティ
「三舩さん、うまい!!」
三舩さんが言ってた。
クラシックをやればやるほど素晴らしさを知り、魅了されていく。
堀越さんが言ってた。
今までにない音楽をやりたいんだ、誰もやってない音楽、ジャンルに縛られない音楽を・・・。
それを聞いて身震いした。
9.CDがクラシック情報誌に紹介されました!
ニューアルバム『OBSESSION』がクラシック情報誌『ぶらあぼ』に紹介されました。
クラシック音楽情報誌『ぶらあぼ』7月号。
記事で飯田有沙さんがこんなふうに書いている。
タイトルが
「ピアノとドラムで拓く未知の領域」。
(そうなんだ、未知なんだ!)
解説文のなかにあるキーワード。
ショッキング、
クール、
セッション。
未知のクラシックを演奏するふたりにふさわしい。
最後はこの文で締めてた。
「生のセッションでこそ味わえる迫力を楽しみたい」
(クラシック音楽情報誌『ぶらあぼ』7月号から引用)
そうなんだ。
体験しないとわからない。
だれも知らないクラシック。
だれも行ったことがないクラシックの世界。
三舩優子×堀越彰OBSESSIONはそこに向かって疾走しているのだから。
クラシック音楽情報誌 『ぶらあぼ』OBSESSION紹介記事
『ぶらあぼ』はCDショップで無料で配布されています。
7月号を手にとってみてね。
クラシックのアーティスト、CD、コンサート情報満載です。
10.コンサートではいろいろ起きているんです
インタビューが終わった。だけど、話しが続く。
ガッティ
「コンサートのMCを見ていて、堀越さんはいつも観客のみなさんに言いたいことがあるんですね。」
三舩さん
「そう、私もはじめて聞く話しがあるんです。私は心の準備があるので。あははっと笑ったあとにすぐ弾けないです。(笑)」
堀越さん
「ボレロに入る時、けっこう大変。」
三舩さん
「手が震えてるもん。」
堀越さん
「ちょっとしゃべりすぎたって。僕は子供の頃、人前でおしゃべり出来ない子で、父親に劇団ひまわりに入れられたんです。5才のとき、子役を2年間くらいやりました。イヤイヤでしたけど。(笑)」
三舩さん
「ひまわりは効果的だったんですね。(笑)」
ガッティ
「今、それが舞台上で役に立っていますね。(笑)」
三舩さん
「1曲目演奏し終わって、マイク持ったときの堀越さんの嬉しそうな顔。“みなさん こんにちは” っていうときの表情。」
堀越さん
「みんなが集まってくれて嬉しいんですよ。」
11.百倍練習しないと追いつかない!
堀越さん
「コンサートとCDは全く別物です。CDは作品ですから。」
三舩さん
「そう、コンサートは生ものですからね。レコーディングが終わったあと、私はCDは聴かない派です。」
堀越さん
「三舩さんはライブもリハーサルの録音を聴かない。僕は趣味みたいなものでいつも聴いています。」
三舩さん
「そうだよね、いつも聴いてるよね。」
堀越さん
「三舩さんはもう弾けるし、譜面もあるし。僕はまったくないところから自分のパートをつくらないといけないからさ。」
三舩さん
「えらいね~~~。」
堀越さん
「たぶん百倍くらいやらないと追いつかない。」
三舩さん
「そのわりにはリラックスしてるよね。」
堀越さん
「そう見せてるだけ。(笑)」
ニューアルバム『OBSESSION』OVCT-00132 定価3,000円(税別)
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