山種美術館開館50周年記念特別展『速水御舟の全貌-日本画の破壊と創造-』
10月22日(土)17時、広尾。
今日は山種美術館にやってきた。
ブロガー内覧会に参加する。
恵比寿駅から広尾方面に10分ほど歩く。
着いた。
駒沢通り沿いなのでわかりやすい場所にある。
(立派だなぁ)
1Fにはカフェ。
想像以上にオシャレな建物だ。
日本画のイメージとはちがう。
わたしは前から山種美術館には来てみたかった。
日本画で有名な美術館だからだ。
広尾に移転したとは聞いていた。
大好きな竹内栖鳳(たけうちせいほう)の《斑猫(はんびょう)》を所蔵しているのでずっと見たかった。
《斑猫》のハガキを持っている。
猫好きに人気の日本画なのだ。
山種美術館では
10月8日(土)~12月4日(日)まで
開館50周年記念特別展
『速水御舟の全貌-日本画の破壊と創造-』
を開催している。
今回はこの速水御舟展のブロガー内覧会。
ちなみに速水御舟(はやみぎょしゅう)のことを知らない。
テレビ東京『美の巨人たち』で見たかもという程度の知識だ。
斑猫が迎えてくれた
美術館のなかへ入る。
(あっ、斑猫だ!)
入り口ちかくの床にいた。
うれしくて思わず写真を撮る。
「よく来たね」と言ってくれているようだ。
一般のお客さんが帰ったあと、ブロガー内覧会が行われる。
展覧会を見終わった方々が帰っていく。
カフェの前で待つ。
(ホテルのロビーみたい)
一般客のあとに入館するこの特別感がたまらない。
受付を済ませ、いざ展示室へ。
地下への階段を降りていく。
(お~、なんか緊張するなぁ)
美術館で地下にいくのははじめてだ。
17:30開始まで時間があるのでミュージアムショップをのぞく。
鉛筆しか使えない!
17:30。
イベントがスタート。
展示室へ入っていく。
係のかたが進行スケジュール、撮影についての注意事項の説明をする。
今回は特別に作品の一部の撮影が許可されている。
美術館で撮影できるなんて貴重だ。
この撮影もブロガー内覧会の目玉のひとつ。
そしてメモ書きについても注意があった。
展示室では鉛筆のみ使用できる。
ボールペン、万年筆、シャープペンシルも使用不可。
これには驚いた。
スタッフのかたに聞いてみると、
美術館のなかではペン、万年筆はインクで作品が汚れたりする危険があるので使えないそうだ。
シャーペンは芯が折れると小さい芯が飛ぶからダメなのだとか。
鉛筆を美術館にお借りして、さてなにから見ようか撮ろうかとしていると、
展示室入り口すぐの作品に目が止まった。
《鍋島の皿に柘榴(ざくろ)》(撮影不可)だ。
(え~、やけにリアルだ。油絵じゃないよな、日本画なのに…)
つやがあって、光を反射している。
超絶のリアル描写に唖然…。
(あ~来てよかった。面白そうだ)
《炎舞》と《名樹散椿》を見逃すな!
展覧会の2大スターがこの2作品。
重要文化財の《炎舞》《名樹散椿(めいじゅちりつばき)》が同時に展示されるのは7年ぶり。
速水御舟《炎舞》山種美術館蔵
速水御舟《名樹散椿》山種美術館蔵
ギャラリートークが面白い!
まずは特別ゲストの青い日記帳Takさんから“イベントを愉しむコツ”が紹介される。
Takさん「今回は速水御舟展ではなくて、『速水御舟の全貌』というタイトルがつけられています。速水御舟の全体を顧みようというもの」
「例えばこの作品(洛北修学院村)はぱっと見て、“えっ、これ御舟なの?”と思われるかも。これは御舟が一時期、群青色にずいぶんはまっていた時期の作品だそう。まあ“群青の時代”とでもいえるかも。有名なピカソが時代時代によって作風を変えていったことはよく知られていることですけれども、速水御舟ほど作風が変わった画家もいないのではないでしょうか。この展覧会をキャプションがなくてご覧になっていくと、ひとりの画家の展覧会とは思えないほど実に多様な作品が並んでいます。それは常に変革を求めていた御舟の姿を現しているものだそうですので、それが一番の見どころです。同じ画家の作品とは思えない展覧会というふうにご覧いただきたいと思います」
「山種美術館は日本でも速水御舟のコレクションを一番多くお持ちの美術館ですが、それだけでは速水御舟の全貌をお見せできないのでいろんなところから作品を借りてきておられます。その関係で撮影はできないものもありますが、『炎舞(えんぶ)』は撮れます。接写で撮ってスマホの待受にするのはいかがでしょうか」
「このあと、館長のお話があります。速水御舟がどのように作風を変えていったかもお話いただければと思います」
つづいて、山種美術館の館長 山﨑妙子さんのギャラリートークがはじまった。
「今回の展示の見どころを解説させていただきます。最初の作品は《瘤取之巻(こぶとりのまき)》。御舟は14歳で松本楓湖(ふうこ)という歴史人物画系の画塾の先生のもとで学びました。その先生は非常に放任主義な先生。ひとつひとつ先生が教えるというわけではない。画塾がもっていた絵巻物、琳派、中国の宋元画などの粉本(ふんぽん。絵の写し、お手本)を借りてそれぞれが模写していた。これは彼が模写した《鳥獣戯画》(高山寺)、《信貴山縁起絵巻》(朝護孫子寺)、《伴大納言絵巻》(出光美術館)など、平安・鎌倉の絵巻から人物や草花のモティーフを書いた覚書のような作品。筆のかすれ具合・草花の描写には、非常に若くしていろんな絵巻物の模写を通じて学んだものを、自身の画力によって墨の濃淡を描き分けている。そういったところが味わい深い」
「《錦木(にしきぎ)》では輪郭線をほとんど使っていない。朦朧体(もうろうたい)という描き方。御舟は琳派も勉強していたので、バックのすすきは琳派の“たらしこみ”という技法で描かれている。かぶっている笠と髪の黒は同じ黒でも、墨とたぶん焼いた岩絵具だと思いますが、質感がちがう。質感の描き分けを生涯通じてやっていく」
「・・・歴史人物画風の表現は、御舟は早い段階でやらなくなっていく。御舟は若い頃、模写だけでなく、スケッチも屋外でやっていた。友達といろんなところに出かけてしていた。終盤の作品は実景のスケッチをしっかりしながら、群青、緑青にこだわって、御舟はカラーリストだと思うのですが、早い時期から芽生えていった」
「《洛北修学院村》。これは現在も京都の洛北に修学院離宮の実景なんです。NHK『日曜美術館』(11/6)に今回の速水御舟展が取り上げられます。最近、番組ディレクターが撮影に行かれたそうですが、あまり変わっていないと。幻想的な風景を作り上げていて面白い作品。この作品の翌年に描いた《比叡山》を最後に、青とか緑とかにこだわった風景がいっさい描かれなくなる。これが非常に御舟の思い切りのいいところだと。モノの質感を徹底的に描写する、つぎの時代に向かう過渡的もの。《洛北修学院村》(滋賀県立近代美術館)は、前期(11/20まで)の展示なので今日見ていただけてよかった」
屏風はVRメディアなのだ!!
《名樹散椿》【重要文化財】
山種美術館蔵
やってきました==。
今回の主役の作品のひとつ。
参加者も浮足立ってる。
写真撮影OK。
ぱっと見、椿の花の芯の部分が光っているのが気になる。
太い枝がこれまたリアルで存在感がある。
散った花びらがふわっと芝のうえにのっかっている。
屏風(2曲1双)をつかっている。
今でいうVR(ヴァーチャル・リアリティ)のような感覚の超越を、屏風が生み出している。
見る位置を変えてみると、枝が前にはみ出してきそうに見えたり、椿の花が動いて見えたりする。そんな気がするのだ。
照明の明るさでもさまざまな姿を現すのだろう。
屏風は仮想現実をつくるメディア、装置なんだ、きっと。
***********************************
《炎舞》【重要文化財】
山種美術館蔵
照明が暗くされた展示室にあった。
なるほど、スターはやはり別室扱いなのだ。
炎がめらめら燃えている。
どうも動いているように見えてしようがない。
蛾もひらひらと舞っている。
おどろおどろしい炎
↓↓↓
モニターのなかの映像を見ているよう。
近くにいってもやはり動いている。
蛾の飛んでいるところに煙が立っている。
↓↓↓
展示室のなかにひとりになった。
こわい。
怪しい炎がめらめら。
蛾がひらひら。
不思議な絵なのだ。
*********************************
写真撮影ができなかったけど大好きなのは《花ノ傍》。
《花ノ傍》1932(昭和7)年制作
所蔵:株式会社歌舞伎座
着物の女性がイスに座っている。
どこかのオシャレなポスターのようだ。
黒と緑の太い縦縞模様が派手。
面白いなぁと思ったのは髪。
北斎の浮世絵の波のような曲線で髪の流れが表現されている。
*********************************
山種美術館 開館50周年記念特別展 速水御舟の全貌-日本画の破壊と創造-展覧会ページ
*********************************
ほかにはこんな絵も撮りました。
【第4章渡欧から帰国後の挑戦へ~渡欧体験~】
わたしはスケッチが大好きなので。
これはうれしかった。
写生にくいついているのは私だけか(笑)。
こころのなかで「いいなぁ~」と何度もつぶやきながら、写真を撮った。
******************************
【第4章渡欧から帰国後の挑戦へ~花鳥画の新展開~】
わたしは赤の芙蓉を育てている。
白も欲しくなった。
御舟和菓子はきれいすぎて食べられない!
このイベントのもうひとつの目玉がコレ。
御舟の作品をイメージして作られた和菓子が食べられるのだ。
わたしは混むのを避けて少し遅れてカフェ椿へ。
ここから選んでくださいと言われると迷ってしまう。
どの作品をかたどった和菓子かを確認しないで、見た目で食べたいものを選んだ。
和菓子『夢の中』だった。
これは作品《花ノ傍》をイメージしたもの。
今日観たなかで《花ノ傍》も気に入っていたのでうれしかった。
カメラバッグをぶら下げて、手もメモやチラシでふさがっていたので和菓子をもらうのには苦労した。
食べる前にちょっとくずれてしまった。
カフェのスタッフのかたが心配そうに見守ってる。
(ちょっと恥ずかしいなぁ)
カフェ椿では御舟の和菓子の人気投票をやっていた。
(一番人気はやっぱり《炎舞》の『ほの穂』かな?)
速水御舟Q&Aトークイベント
和菓子に感激して口をもごもごさせていると、同じカフェスペースで特別ゲスト・青い日記帳 Takさんと山﨑館長のトークイベントがはじまった。
二人がスライドを見ながら作品の解説をしていく。
山﨑館長「《鍋島の皿に柘榴(ざくろ)》。この作品にも逸話があります…」
館長が弥夫人から聞いたエピソードだ。
「御舟の義弟にあたる北原大輔氏が東博(東京国立博物館)の陶磁器担当主任だった。北原氏に自慢のお皿を見せるために、タンスを空にしてその上に鍋島の皿を飾った。御舟はタンスの引き出しに三人の子供たちを一人ずつ入れたら面白いと思い、子供を二人入れたところでタンスが倒れ鍋島の皿が割れてしまった。御舟は相当がっかりしたらしい。絵からは完璧主義者のようなイメージですが、実際は家族思いのお茶目なひとだったようです…」
絵画の技術的な説明だけではなく、館長自身の取材から画家本人の人柄に迫っていく。
絵を見ながら、それを描いたひとを具体的に想像できると、作品のファン、画家のファンになれる。
ファンになったらもっと絵を見るのが楽しくなる。
わたしの大好き御舟ベスト3はこれだ!
1.《炎舞》
2.《名樹散椿》
3.《花ノ傍》
山種美術館 山﨑妙子館長に聞いてみた
まずはこの展覧会について。
山﨑館長「今回の御舟展は当館の顔とも言える速水御舟の展覧会を、開館50周年を記念して(当館のみならず)他の美術館から作品をお借りして展示するというもの。23年ぶりの展覧会になっています」
わたし「創立者 山﨑種二さん(館長の祖父)は日本画をあまり見たことがない方にも見ていただきたい、という志があったそうですが」
山﨑館長「日本画は一般のかたにはまだまだ馴染みが薄いです。山種美術館の名前を知らないかたも多い。一人でも多くのかたに、日本画を通じて生活に癒やしだったり穏やかな気持ちだったり、日本人ならではの美意識を通じての体験をしていただきたい」
わたし「気軽に山種美術館に来れるような試みをされているようですが」
山﨑館長「学芸員による無料のギャラリートークも、今年の夏からはじめて、非常に多くのかたがたに熱心に耳を傾けていただいています。日本画を勉強したい、知りたいという気持ちを感じて非常にうれしく思っています。イベントや講演会をとおして日本画の良さを体感していただきたい。ブロガー内覧会は青い日記帳の中村さんのおかげで、多くのかたに広く知ってもらい、SNSで発信するかたがたに展覧会に来ていただいてその見どころなどをアップしていただく。その試みを大事にして毎回のように行っています」
わたし「まだ山種美術館に来たことがないかたがたに一言お願いします」
山﨑館長「知らないと日本画は敷居が高いと思われるかたが多い。もともとが日本古来の自然のものを材料に使って、四季を描いていたりとか日本人にすごく響く絵画。ぜひ、ものは試しで観に来ていただきたい。日本画は敷居が高いものではないので、山種美術館が気軽に愉しんでもらえる場であればいいなぁと思っています」
美術館はアミューズメントパークだ!
今回、解説を聴きながら作品を観てまわった。
館長のギャラリートークは贅沢だった。
速水御舟の研究をしているかたなので、ことばが熱い。
TV『美の巨人たち』の番組のなかにはいったみたいだった。
こんな経験ははじめて。
美術館には何度も行ったが、自分が好きな絵をただ見れたらそれでよかった。
このイベントでその考えが変わった。
展覧会に行くと、500円くらいでイヤホンで解説を聴けるサービスがある。
次回、美術館に行ったらイヤホンで解説を聴きながら作品を見ようと思う。
作品の背景、画家の人生も少しでもわかれば見えるものがちがってくる。
絵画鑑賞は感覚を磨く、自分の興味のセンサーを拡げる遊びなんだ。
難しいことは捨てて、絵を観に出かけてみませんか。
きっと楽しいことがいっぱい見つかりますよ!
***************************************
***************************************